日本各地の郷土料理で味わう鯨の魅力【第2部:郷土料理編】

鯨の郷土料理

鯨は古くから日本の食文化の一部として親しまれてきました。前回の「第1部:鯨の栄養編」では、鯨肉の栄養価や健康効果について解説しました。今回は、「第2部:郷土料理編」として、日本各地で受け継がれる鯨を使った郷土料理に注目します。北海道から九州まで、それぞれの地域の風土や文化に根差した鯨料理は、どれも個性豊かで魅力的です。歴史ある調理法や素材の組み合わせから、鯨が日本の台所でいかに愛されてきたかを感じ取ってください。

鯨を使った郷土料理をご紹介♪

くじら汁(北海道・青森・新潟):厳しい寒さの中で生まれたあったかい郷土料理

くじら汁

くじら汁は北海道や青森、新潟で特に親しまれている郷土料理。寒冷地特有の厳しい冬に備え、鯨肉を味噌仕立てなどの汁にして体を温める伝統があります。柔らかく煮込んだ鯨肉に、地元の野菜や山菜をたっぷりと加え、コク深い味わいが楽しめます。味噌の塩味と鯨肉の旨味が溶け合い、シンプルながら滋味深い一品です。脂身の少ない部位を使用するため、軽やかな口当たりも魅力的です。各地それぞれの具材やレシピや調理法などをぜひチェックしてみてください。

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鯨汁 北海道 | うちの郷土料理:農林水産省
くじら汁 青森県 | うちの郷土料理:農林水産省
くじら汁 新潟県 | うちの郷土料理:農林水産省

はりはり鍋(大阪):水菜と鯨のあっさり鍋料理

はりはり鍋

大阪発祥のはりはり鍋は、水菜のシャキシャキ感が特徴的な鍋料理です。「はりはり」という名は、水菜の食感を表現した擬音から来ています。鯨の赤身肉を薄切りにして、昆布や鰹節でとったあっさりとした出汁で煮込むのが一般的です。関西の食文化に根付くこの料理は、素材そのものの風味を最大限に活かしており、シンプルながら飽きのこない味わいが魅力です。

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鯨のハリハリ鍋 大阪府 | うちの郷土料理:農林水産省

大和煮(全国):甘辛い醤油煮でご飯のお供に最適

大和煮

大和煮は、日本全国で食べられる鯨料理の代表格です。鯨肉を醤油、砂糖、みりんで甘辛く煮込んだ一品で、ご飯のお供としても愛されています。缶詰として市販されていることも多く、保存食やお土産としても人気です。鯨肉の濃厚な味わいと、醤油ベースの深い味付けが絶妙なバランスを生み出しています。家庭でも手軽に再現できるため、現在でも親しまれている料理です。

鯨カツ(大阪・全国):サクサク衣の洋風アレンジ

鯨カツ

鯨カツは鯨肉を洋風にアレンジした料理で、大阪をはじめ全国的に人気です。鯨の赤身肉に下味をつけて衣をまとわせ、カラッと揚げることで、サクサクの食感とジューシーな肉の旨味が楽しめます。とんかつソースやタルタルソースを添えていただくのが一般的ですが、ポン酢や塩でさっぱりと仕上げるスタイルもおすすめです。洋食の要素を取り入れた一品として、食卓を彩ります。

くじらのたたき(和歌山など):香ばしい表面焼きの絶品前菜

くじらのタタキ

和歌山では、くじらのたたきが絶品料理として知られています。鯨肉を表面だけ炙り、香ばしさを引き出した後に薄切りにしていただきます。ポン酢や薬味を添えることで、さっぱりとした味わいが楽しめます。シンプルな調理法ながら、鯨肉本来の風味を堪能できる一品で、前菜やお酒のお供として人気があります。

 

くじらのたれ(千葉):深い旨味が広がる、千葉の伝統

千葉県の郷土料理 くじらのたれ

くじら肉をたれに漬け込んで干した千葉県南房総の郷土料理「くじらのたれ」。木の皮のような見た目で真っ黒!「くじらのたれ」に使用されるクジラは体長12メートルほどのツチクジラという種類。たれに漬け込み、干して作る郷土料理です。鎌倉時代から室町時代にかけて沿岸捕鯨が行われ、冷蔵庫がない時代に保存食として普及し、南房総地域では「突き取り法」による捕鯨が特徴。「くじらのたれ」は地元の味として親しまれ、故郷に帰省した人々にも人気があるそうです。

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くじらのたれ 千葉県 | うちの郷土料理:農林水産省

 

くじらご飯(島根):鯨肉の旨味が広がる、島根の伝統ご飯

くじらご飯を食べる親子

くじらご飯は、島根県の郷土料理で、鯨肉とご飯を炊き込んだ伝統的な一品です。塩漬けや醤油漬けの鯨肉、米、しょうが、調味料を加え、一緒に炊き込みます。炊き上がった後はよく混ぜ、鯨肉の旨味を全体に行き渡らせます。濃厚な鯨肉の風味としょうがの香りが特徴で、素朴ながら満足感のある味わいです。祝いの席や特別な日に提供されることが多い、島根を象徴する料理です。

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くじらご飯 島根県 | うちの郷土料理:農林水産省

 

くじらの竜田揚げ(山口):外はカリッと、中はジューシー!

くじらの竜田揚げ

くじらの竜田揚げは、山口県の郷土料理で、鯨肉を醤油、みりん、砂糖、ショウガ汁などの調味料に漬け込み、片栗粉をまぶして揚げた一品です。この料理は、家庭料理として日常的に食されており、学校給食や地元の飲食店のメニューにも登場します。また、スーパーでも鯨肉が購入できるため、家庭で手軽に楽しむことができます。作り方は、まず鯨肉を5mmほどの厚さに切り、調味料に約30分漬けて下味をつけます。その後、肉の汁気をよく切り、片栗粉を薄くまぶし、170℃に熱した油で約3分間、こんがりと揚げます。山口県の食文化を代表する一品として、多くの人々に愛されています。

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くじらの竜田揚げ 山口県 | うちの郷土料理:農林水産省

 

くじらの南蛮煮(山口):外はカリッと、中はジューシー!

くじらの南蛮煮

山口県は、江戸時代から捕鯨に関わりが深い地域として知られています。南蛮煮とは、肉を醤油や酢、砂糖などで甘辛く煮込んだ料理のこと。油で炒めたあとに煮込むことでしっかり味が染み込み、保存性も高い南蛮由来の調理法だそう。郷土料理「くじらの南蛮煮」は赤身と皮を味噌で煮込んだ栄養豊富な一品で、家庭料理として親しまれ、大晦日や節分などの節目に作られる風習もあります。調理ではクジラ肉や野菜を煮込み、家庭ごとに具材が変わる柔軟な料理法が特徴です。

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くじらの南蛮煮 山口県 | うちの郷土料理:農林水産省

 

松浦漬(佐賀):酒粕に漬け込んだ深い味わい

松浦漬

佐賀県の北西部にある唐津市呼子町の伝統的な郷土料理「松浦漬」は、鯨の軟骨を使った珍味です。鯨の軟骨を酒粕で漬け込み、砂糖やみりんなどで調味して熟成させることで、独特の風味とコリコリとした食感を楽しめる逸品に仕上がります。松浦漬の名前は、松浦地方(現在の唐津市や松浦市付近)で発祥したことに由来します。日本酒や焼酎との相性が良く、酒の肴や贅沢なおかずとして親しまれています。長期保存が可能で、贈り物にも利用されます。

鯨じゃが(長崎):ホクホクじゃがいもと鯨肉の旨味、長崎伝統の心温まる煮物

鯨じゃが

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/46_19_nagasaki.html)

「鯨じゃが」は、長崎県の郷土料理で、鯨肉とじゃがいもを主な材料とした煮物です。鯨肉の旨味とじゃがいものホクホクした食感が特徴で、家庭料理として親しまれています。材料には、鯨肉、じゃがいも、にんじん、たまねぎ、糸こんにゃく、絹さやを使い、調味料は砂糖、みりん、酒、しょうゆ、だし汁です。鯨肉を下処理した後、野菜と一緒に煮込み、味を染み込ませて仕上げます。ご飯のおかずや酒の肴にぴったりで、長崎の食文化を感じられる一品です。

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鯨じゃが 長崎県 | うちの郷土料理:農林水産省

 

まとめ:鯨文化を未来へつなぐ

鯨料理は、日本の風土や食文化に根差した伝統の味です。それぞれの郷土料理が、地域の特色や工夫を反映し、多様な味わいを生み出しています。現代では鯨食文化を取り巻く状況が変化していますが、その歴史と価値を再認識することが重要です。次の記事では、鯨食文化を支えてきた 捕鯨の歴史が息づく日本の名所・観光スポット について深掘りします。ぜひ引き続きご覧ください。

捕鯨の歴史がわかる名所:日本の文化を学べるスポット – 和歌山・長崎・山口など

鯨肉の魅力:栄養価と全国の郷土料理に迫る!【第1部:栄養編】